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2019年7月10日3 分

中小企業庁の新長官が講演

〈中小機構〉

モノづくりと中小企業政策を語る前田氏

製造業の国際競争力向上に向けたシンポジウム「モノづくりコンファレンス2019」(日刊工業新聞社、モノづくり日本会議主催)が7月4日、東京都千代田区の経団連会館で開かれた。経済産業省中小企業庁の前田泰宏次長(5日付で中小企業庁長官に就任)が「ニッポンのモノづくり国家戦略」をテーマに講演。中小企業経営者をはじめ製造業関係者を中心に約600人が熱心に聴講した。

 前田氏はまず、100年以上続く老舗企業の良さと、デジタル化の波をどうミックスさせるかが国内製造業の将来の鍵を握ると強調した。その上で、70歳以上の中小企業経営者の過半数は後継者が不在という現状について「放置すれば日本のサプライチェーンがつぶれてしまうという国家的課題だ。特に大企業の皆様には中小企業の事業承継・後継者問題に目を向けてほしい」と訴えた。

 人口減少に伴う人手不足や国内マーケットの縮小についても言及。中小企業の輸出比率がドイツは24.9%なのに対し、日本は4.7%と5分の1にとどまるとし、「外で稼ぐ力を鍛えないと国際的に格差はさらに広がる」と断じた。輸出が少ない理由として“言葉の壁”を挙げ、「ディープラーニングなどを使った翻訳技術が進歩すれば、日本人の海外進出力は格段に向上する」と指摘した。

 また「さまざまなデジタル技術を実証ではなく実装に落としこんでいく段階に入った」とし、「他国と差別化を図りつつ世界で相応のポジションを築いていく」と強調した。頻発する自然災害や国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)への対応力強化にも触れた。

 続いてファナックの松原俊介専務執行役員が「スマート工場実現に向けての課題と取り組み」と題して講演。IoT(モノのインターネット)やAIへの取り組みを紹介した上で「いずれも課題を解決するための手段であり、目的化すべきではない」と強調した。日本ロボット工業会の小平紀生システムエンジニアリング部会長は、産業用ロボット分野への中国の台頭やシステムインテグレーターの重要性を指摘した。

 グレイステクノロジーの松村幸治会長は、米紙ニューヨークタイムズが「日本の製品マニュアルはジョークだ」という記事を掲載したことを紹介。海外に進出する大手メーカーの製品マニュアルは、英語になっていない、表記が不統一などさまざまな不備から、クレーム電話が月1万件以上かかってくるところが大半だとし、「モジュール化と標準化を進めて解決すべきだ」と話した。実際にマニュアル制作を抜本的に改革した豊田自動織機の担当者が事例を発表した。

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