中小企業・小規模事業者が取り組む、経営力向上に資する革新的サービス開発や、試作品開発、生産プロセスの改善などを行うための設備投資等の一部を支援する「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金(通称:ものづくり補助金)」。
平成28年度第2次補正予算の公募が平成28年11月14日(月)から始まっています。郵送での応募締め切りは平成29年1月17日(火)当日消印有効です。電子申請は平成29年1月4日(水)に開始予定で、1月18日(水)17:00が締め切りです。
本記事では、5年目となる今年度の変更点を中心に、申請で気を付けるべき点等をお伝えします。
(2016年12月5日インタビュー実施)
「第四次産業革命型」を新設!
革新的サービス」、「ものづくり技術」の2つの対象類型に、それぞれ「一般型」、「小規模型(設備投資のみ、試作開発等)」、「第四次産業革命型」の事業類型があります。事業類型に「第四次産業革命型」が新設されたことが今回の特徴です。
「日本再興戦略2016」には、今後の生産性革命を主導する最大の鍵は、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、人工知能、ロボット・センサーの技術的ブレークスルーを活用する「第4次産業革命」であると、記されています。
その「第4次産業革命」を我が国全体に普及させる鍵は、中小企業にあります。中小企業の現場ニーズや現場目線でITやロボットの導入を進めていただくことが重要です。
そして我々には、個々の事業者のビジネスの実態、業務フロー等に応じた、丁寧な導入サポートが求められます。そこで、今回のものづくり補助金では「第四次産業革命型」の類型を設置し、「第4次産業革命」の実現を後押したいと思います。
「第四次産業革命型」は補助上限額3,000万円(補助率2/3以内)で、「IoT・AI・ロボットを用いた設備投資」にご活用いただけます。
まず、IoT機能を活用することが前提です。IoTの機能を活用して複数の機械等をネットワーク環境に接続させ、そこから収集される各種の情報・データ(ビッグデータ)を活用して、①監視(モニタリング)、②保守(メンテナンスサービス)、③制御(コントロール)、④分析(アナライズ)のうち、いずれか1つ以上を行う必要があります。
さらに、IoTの付加機能活用としてAI(人工知能)技術もしくは、ロボットを活用しなくてはなりません。もちろん、双方を活用した事業も対象となります。AIやロボットは、新規に導入するのではなく、既設のAIやロボットをネットワーク環境に接続するものも対象となります。
ただし、IoT機能を活用せず、単独でAIやロボットを活用する事業については、第四次産業革命型での応募はできません。このような場合には一般型もしくは小規模型で応募してください。
補助対象経費は、機械・装置、工具・器具はもちろんのこと、専用ソフトウェアの導入(外部から購入した場合)も、機械装置費の補助対象となります。ただし、ソフトウェア開発を社内で行う場合など「人件費等」は、その他の類型も含め補助対象経費となりませんのでご留意ください。補助対象経費の詳細については、公募要項の10ページをご確認ください。
「第四次産業革命型」で応募する場合には、インターネット環境を用いたシステム構成図を記載していただくとわかりやすいです。システム構成図とは、導入しようとする機械装置およびAI、ロボットなどが、どのようにネットワークにつながっているのかを示した基本設計図などです。
ここで一つ目の申請書類のポイントですが、システム構成図に記載された各種機械装置が、既存の機械装置なのか、新規で導入する機械装置なのかを明記してください。つまり、どの部分を補助事業で導入するのか、わかりやすく伝えてください。
併せて、①監視、②保守、③制御、④分析のうち、いずれか1つ以上を行う必要がありますが、システム構成図のどの部分でそれら機能が働くのかも、明記をしてください。
当然ながら採択審査委員会においては、提出書類の内容で審査をされますので、「わかりやすさ」を意識しながら、システム構成図を作成してください。なお、「第四次産業革命型」については、従来の一般型や小規模型と比較して特段の革新性を備え、その事業が社会に与える影響も含めた波及性の高いご提案を期待しております。
「一般型」、「小規模型」は雇用・賃金拡充で上限UP!
基本的な要件は昨年度とほとんど同様ですので、ぜひ昨年の「補助金虎の巻」も参考になさってください。
「一般型」、「小規模型」の2つの事業類型では雇用・賃金拡充による補助上限額上乗せがあります。
まず、雇用者(従業員)の維持・増加をし、全従業員の平均賃金および従業員の最低賃金グループ(従業員の内、賃金が低い下位10%の従業員グループ)の平均賃金を5%以上引き上げる場合には、補助上限額が倍増されます。つまり、一般型の基本額は1,000万円ですが、2,000万円に増額され、小規模型は500万円が1,000万円に増額されます。
さらに上記の上乗せ要件に加えて、従業員の最低賃金グループの賃金を10%以上引き上げる場合には、さらに1.5倍、つまり基本額の3倍を補助します。これら賃上げ・雇用要件は、事業終了後に実際行われたかを必ず確認されますのでご留意ください。
詳細の規定や申請時に必要な様式については、公募要領の14ページ・15ページ に記載がありますので、ご確認ください。また、平均賃金や最低賃金グループの算出方法は、45ページから51ページに記載がありますので、自社の実績を当てはめ、算出してください。
補助上限額上乗せに限らず、公募の要件等に関するご質問については、各都道府県地域事務局までおたずねください。
申請書は納得感のある、ストーリーが大切
類型にかかわらず、申請書類のポイントですが、1つのストーリーとして事業計画が読み取れることが重要です。
元々企業が抱えている課題を、機械設備等を導入することで解決し、その結果、新たなサービスや製品の開発、生産プロセスの改善によって経営力が向上することを、順序を追って、わかりやすく申請書で伝えてください。
裏を返せば、機械設備等を導入することを前提で計画を立てますと、必要性のつじつまが合わなくなり、本来の生産性向上等を実現しようとする意図はなく、機械設備等が欲しいというだけではないのかとの疑念を生じさせます。
大変シンプルなことではありますが、例年申請書の□の「レ」の付け忘れが多くなっています。「対象類型の分類」と「事業類型の内容」の「レ」を付け忘れている場合は、その時点で「審査対象外」となります。お気を付けください。
また、「審査の加点」に関する項目の一部では、「レ」を付けなければ要件を満たしていても、加点されません。加点項目は最後に見直しを行い、当てはまる項目があればチェックしてください。特に、「小規模型」に応募する小規模企業者の方は「小規模企業者である」に忘れずにチェックしましょう。
さらに、平成27年度補正の2次公募では、法人番号の桁の入力間違いも見られました。法人番号については、国税庁のホームページにて、自社の法人番号を確認できますので、ご確認ください。
電子申請では必須項目のチェック漏れや、数値の入力ミスに伴うエラーメッセージも表示されますので、ぜひご活用ください。平成29年1月4日(水)に開始される予定です。
今回も「認定支援機関」に事業計画の実効性が確認されていることが要件となっています。 事業計画の策定に当たっては、お近くの「認定支援機関」にご相談ください。締め切り間際では対応が間に合わないこともありますので、早目の対応をお願いします
一層生産性を高め、稼ぐ力を高めていただくために
中小企業・小規模事業者における喫緊の課題として、一層生産性を高め、稼ぐ力を高めていく必要があると感じています。平成28年度補正予算「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」においては、その点を重視し設計しました。
「第四次産業革命型」において3,000万円という補助上限額を設定する一方で、小規模事業者にも使いやすいメニューを設けるとともに、賃上げ・雇用対策に取り組む事業者等を重点的に支援していきたいと思います。
たくさんのご応募、お待ちしています。