今回取り上げるのは、地域の活性化や海外需要の獲得を目指す創業(第二創業含む)へのチャレンジを支援する「創業補助金」。
本年度の募集では、上限額が200万円に統一され、申請書類も新しくなりました。
(※平成25年度補正事業の募集は終了しました。)
補助金申請のポイント
地域を挙げて創業支援を行っている、東京都の多摩地区。官・民・教育機関が連携した取り組みは、全国からも注目を集めています。中核のひとつである認定支援機関のご担当者から、創業補助金の採択へ向けた『サポート内容』と『申請書のポイント』について、お話しいただきました。
多摩信用金庫 価値創造事業部
森田憲輝 インキュベーションマネージャー
注目度、認知度が上がり、セミナー参加者も増加傾向に
「創業補助金」は広く浸透してきたと感じます。ご相談者の方も、様々な情報を調べてから当機関にいらっしゃることが多く、開催しているセミナーの冒頭で話していることもありますが、今年度の応募様式変更についても、理解・認知度は高いです。
当機関で実施した、24年度補正予算「創業補助金」説明会では、250名前後の方にご参加いただきました。更に、25年度の補正では、16回の説明会開催で約150名にご参加をいただき、参加者は増加傾向です。
当機関の特長として、多摩地域にある多くの創業支援機関が連携して支援を行っていく、「創業支援センターTAMA」を運営しています。多摩地域で暮らし、多摩地域で自分らしい働き方を実現し、安心して事業が継続できる、そんな多摩地域を目指し、地域で創業の支援を行っています。
また、市役所や日本政策金融公庫とも連係した創業支援も行っています。そういった活動から、市の広報や連携機関でセミナーの告知を行っていただき、セミナーの参加者は、性別、年齢、希望業種などが多岐に渡っており、学生の方もいらっしゃいます。
活動のひとつに、日本政策金融公庫と共催で「ミニブルーム交流カフェ」という創業した先輩から学べる、講演会形式のセミナーがあり、平成25年度は22回開催し延べ387名の方々にご参加いただきました。すぐに創業を考えていなくても、創業に少しでも興味を持った幅広い方にお越しいただくために、レストラン、喫茶店、図書館で開催したり、内容によって開催日時を平日の日中と、夜、土曜に分けるなど、工夫を凝らしています。平成26年度は24回の開催を予定していますので、お近くの方は是非ご参加ください。
当機関が支援を行った「創業補助金」の応募者は、25年度補正では約50名でした。セミナーに参加して1年後に、創業に踏み出すような方もいらっしゃるので、6月30日に向けての正確な予測は立ちませんが、応募者は昨年12月24日の締め切り時よりも増加することは、見込まれています。
「地域活性化」に向け、創業支援をサポート
当機関における創業支援は、「地域そのものを良くする」ことを目的に、十数年前から始まった取り組みです。「地域の活性化」をモットーに、事業者に対し「創業」、「成長分野」、「事業承継(後継者対策)」、「再生」の4つの切り口からサポートしています。
創業と言うと、資金調達などの融資面でのサポートが連想されがちですが、当機関では、多くの方に創業していただくために、事業計画の策定など、経営面でのご相談の受付を積極的に行っています。
当機関には、約600名の営業担当などによる企業情報、2600社が登録された企業データベース、公的機関との繋がりなど、創業に役立つ情報・パートナー候補が集まっています。それらを活かし、チラシ・ホームページの作り方など、プロモーションに役立つセミナーの開催や、創業事業を進めるにあたっての、企業マッチングも行っていますので、ご相談の際に、併せてご活用いただければと思います。
申請書のブラッシュアップや、お困り事のご相談を、常時受け付け
創業に関するご相談は、いつでも大歓迎です。ビジネスプランが固まった段階はもちろん、創業に向けて何を行ったらよいのか分からない状況でも、遠慮なくお問い合わせください。
ただし、創業補助金の申請をお考えの方は、ご相談前に募集要項をひと通り読んでいただき、申請書をご自身なりに一通り記載してからお越し頂くことをお勧めします。一度ご自身の考えをまとめるためにも、数行でもよいので、一通り記載してみてください。申請書が記載されていないと、ブラッシュアップを行いたくても、的確なアドバイスが行えないところもあります。
状況によってですが、ご相談者の方と当機関との申請までのやり取りは、面談やメールを合わせ、最低でも3~4回は行っています。さまざまなご指南をいたしますが、これから創業されるみなさまですので、極力、ご自身で事業内容を決定し、申請を進めていただくことで、今後の経営での決断力なども鍛えられるかと思います。
やり取りでは課題など何かにお困りのことがあれば、遠慮せずに是非口に出して教えてください。解決できる手段・ツールは揃っていますので、打開策がきっと見つかるはずです。
当機関では、『事業者が、補助金申請時は「安心して創業」でき、創業後は「安定して事業継続」を行える』、ことを目指し、みなさまのサポートに当たっています。申請だけでなく、創業後も見据えた、中長期的な事業を考えていきましょう。
事業の実現可能性を、分かりやすく書くことが大切
採択される申請書のポイントは、いかに「事業の実現可能性」を伝えられるか、であると思います。ビジネスアイディアを競うコンテストではないため、事業が成立することを示すことが重要になります。どのような事業になるかイメージを膨らませることで、より納得感のあるビジネスプランになります。
例えば飲食店での創業を考えた場合は、ターゲット、席数、来店者数(回転数)、営業時間、メニュー、単価などを考えることで、売上や利益の数字の"確からしさ"が見えてくると思います。無理のないビジネスプランであることの確認にもなりますので、数字に落とす際は、より具体化して考えることを追求してみてください。具体化する中で、気付かなかった、新たなセールスポイントにも気付けるかもしれません。
更に、店舗の外観・内装、メニュー表などの写真や図を申請書に添付して、ビジュアルで直観的に働きかけることも効果的だと考えています。
実現可能性に付随して、継続性も視野に入れるとよいと思います。補助金はスタートであって、その後の事業の存続はビジネスプランにかかっています。ビジネスプランは、明日から何をすれば良いかを示す、アクションプランも兼ねています。申請書のスケジュール欄に日付まで入れていただくと、より実現可能性が増し、行動を起こす動機も強まると思います。
「独創性」では、事業について、既存のサービスと異なる部分を、セールスポイントとして明確に記載することが必要です。想定される競争相手との違いを明確に伝えることを心がけてください。
また、申請書を書くことに気を取られて忘れがちですが、「分かりやすく」記載することは大前提です。分野に精通していない素人の方でも読めるよう、専門用語や、自分だけが理解している仕組みなどは、説明を付けるなどの工夫を行うようにしましょう。ビジネスプランの作り方に関する冊子を、当機関で配布しておりますので、そちらで基本に漏れがないようチェックいただくとよいと思います。
「創業補助金」をきっかけに創業者が増え、地域をよくするパートナーが増えることを願っています。
平成25年度補正予算において「創業補助金」をリニューアルし、2月28日より公募を開始いたしました。皆様から多くのお問い合わせをいただいておりますので、改めて『今年度の主な変更点』と『採択に近づく申請書作成のポイント』について、お話したいと思います。
中小企業庁 経営支援課
山本瞳 係長
申請者に分かりやすい補助金になりました。
平成24年度補正予算の「創業補助金」は、地域需要創造型起業・創業、第二創業、海外需要獲得型起業・創業の3類型に分けて募集を行いましたが、地域需要創造型起業・創業と海外需要獲得型起業・創業の違いが分かりにくいという御意見を多くいただきました。そこで申請者に分かりやすい補助金を目指し、国内/海外の事業展開に関係なく、これから創業をお考えの方に広く応募いただけることにしました。
支援内容における昨年度との大きな変更点は、補助上限額が一律200万円になったことです。申請書もこれまでの4枚から3枚に削減しました。そのため、これまでとは申請書の様式に変更がありますので、お間違えのないようご注意ください。
昨年度は、合計で3回の募集を行い、各募集において2回の締切を設けました。これまでに14,165件ものご応募をいただき、6,299件が採択されました。募集を重ねる毎に、応募件数は伸びる傾向にありましたので、今年度も引き続き、応募が多数寄せられることが予想されます。今年度に関しては現在募集中であり、1次締切が3月24日、2次締切が6月30日です。仮に1次締切で採択されなかった場合でも2次締切に再度応募が出来ますので、そのような場合でも1度の挑戦で諦めずに、再チャレンジしていただければと思います。
提出書類のモレに注意。申請内容は、審査委員にきちんと伝わるように。
審査のポイントは、大きく分けて2つです。1つ目は、基本的なことなのですが、提出書類に漏れがないことです。申請者は初めて創業される方が多く、申請書類の作成に慣れていないことが想定されます。特に認定支援機関による事業計画の確認書類が不足しているケースは、よく見られるので注意しましょう。せっかくの素晴らしいアイディアであっても、申請書類に不備があると、資格要件を満たしていないと判断され、審査の対象外となってしまいます。
2つ目は、申請内容が審査委員にきちんと伝わるものであることです。事業のターゲットや商品の優位性などが書かれていないため、やりたい内容が伝わりきれていないことが見受けられます。5W1H(「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」)が伝わるように心がけて記載していただくと、分かりやすい説明に近づくと思います。
また、押さえるポイントが記載されていることも重要です。例えば、幾つかあるポイントのうち、「売上、経費に根拠があること」について記述する際は、計画と数字をリンクさせ、実現可能性のある根拠を明示することが大切になります。さらに、審査の着眼点として認定支援機関から受けた支援内容を確認させていただいています。申請書作成にあたっては、認定支援機関と密に連携し、受けたサポート内容を申請書類に記載してもらうようにしましょう。
何から始めてよいか、迷った際はマニュアルを参考に。最終確認は、チェックシートを活用。
創業にあたっては、何から始めてよいか分からないという方も多くいらっしゃると思います。そういった方々のために、ホームページ上では、創業までのステップを解説した小冊子や、事業計画書の書き方、起業に役立つフォーマット・書式集などを紹介しています。迷った際は是非、ご活用いただければと思います。また、前述の申請書類の記入・提出漏れを防ぐ方法として、『記入要領』や『提出書類チェック表』で最終確認をしていただくことも有効です。
また、各地域事務局をはじめ、公募説明会の開催や個別相談会を設けている場合がありますので、そのような場に足を運んでみると、ヒントを得たり、新たな発見があるかもしれません。頭に描いていたアイディアを認定支援機関に相談する中で形にし、事業計画を策定された事業者の方もいらっしゃいます。夢の実現のために、様々なツール、機会を積極的に取り入れ、応募への準備を進めていただければと思います。